メモ

前略)

適応もしなくなった生活形式からこのように脱却してしまい、最高の幸福と輝く自覚を味わった数時間によって中断された生活を別れ、行くもの、召されて去って行くものとして送っていることは、しまいには彼にとって大きな悩みとなり、もはやほとんど耐えられぬ苦しい重圧となった。なぜなら、すべてが彼を捨てたのに、捨てるのは実際は自分では無いが、名誉心や自負や思いあがりや不実や愛の欠如によって、住みなれたなつかしい世界で疎んぜられ、死に去っていくように自分からしたのではないか、ということが、はっきりしなかったからである。真の召命に伴う苦痛のうちで、これは最もにがい苦痛である。召命を受けるものは、それとともに、贈り物や命令ばかりでなく、罪のようなものを背負いこむ。

中略)

新しい着物が彼のために用意されていた。

ヘッセ『ガラス玉演技』Kindle No.868 / 5111

故郷から捨てられるものの苦痛に関する表現。

普遍的な現象と言えるのかもしれない。

故郷を去る者には、新しい着物が必要らしい。